アトピー咳嗽とは
日本人の長引く咳の3大要因のうち、最も多いとされるのがアレルギー性の咳になります。アレルギー性の咳は、主に以下の2種類に分類されます。
- 咳喘息
- アトピー咳嗽(がいそう)
両者ともにアレルギーが原因で起こるものですが、気管支を広げる薬が咳喘息には有効であるのに対して、アトピー咳嗽では無効になります。
そのため、アトピー咳嗽の場合は、抗ヒスタミン薬の内服を行います。
アトピー咳嗽は、喉のイガイガ感を伴う咳が出ることが特徴です。一般的に中高年の女性に多くみられ、会話やストレスで悪化する傾向にあります。
アトピー咳嗽の診断
日本呼吸器学会の2019年のガイドラインでは、アトピー咳嗽は、以下の4項目を全て満たす場合に診断されるとの記載があります。
- 喘鳴や呼吸困難を伴わない乾いた咳が3週間以上続く
- 気管支拡張薬が無効である
- アレルギー素因を疑う所見がある
- ヒスタミンH1受容体拮抗薬およびステロイド薬にて咳嗽発作が消失する
長引く咳の症状がある方で、気管支を広げる薬が効かず、アレルギー体質の方でヒスタミンH1受容体拮抗薬(一般的にドラッグストア等で販売している花粉症の時の飲み薬)を使用した際に咳が治まった場合は、アトピー咳嗽と診断できます。
また、咳喘息の判断に有効な呼気一酸化窒素(NO)検査では、アトピー咳嗽の場合は数値が上昇しない事も一つの判断基準になります。
なお、実際は咳喘息とアトピー咳嗽が併発している例もあり、診断が難しいという側面もあります。
しかし、アトピー咳嗽は命に関わる重篤な病気ではなく、将来的に通常の喘息に移行することもありません。
まずは患者さんの咳症状を改善することが第一となりますので、アトピー咳嗽の可能性がある場合は、積極的に治療を行っております。
アトピー咳嗽の治療
咳喘息の場合は気管支を広げる薬で改善するのに対して、アトピー咳嗽の場合では効果はありません。アトピー咳嗽の原因は、気道が狭くなっているのではなく、気道の表面がアレルゲンによって敏感になっていることによります。
そのため、気道の過剰な反応を落ち着かせるために、抗ヒスタミン薬を用います。なお、抗ヒスタミン薬は60%の効果が認められています。
抗ヒスタミン薬でも改善しない場合は、ステロイド薬(吸入もしくは内服)を併用して治療します。
これらの治療は長期間行う必要はなく、治療によって症状が落ち着いたら、一旦治療を終了し、その後は経過をみていきます。