気管支喘息とは
気管支喘息とは、アレルギー物質を吸引したり、運動や天候などの大きな変化などで気管支が収縮してしまうことで、呼吸困難やゼーゼーという喘鳴を起こす病気です。
現在では、吸入ステロイド薬による治療が確立したことにより、完治は難しいとしても喘息は比較的簡単に症状を緩和させることができる病気となりました。
現代は喘息を患っていてもオリンピック選手になれる時代です。ぜひ、この時代に生まれたことに感謝し、タバコは控え、喘息に苦しまない生活を送っていただければ幸いです。
気管支喘息の症状
- 季節の変わり目に咳が続いたり、風邪の後に咳が長びく
- 息を吐く際にゼーゼー、ヒューヒューという喘鳴が出る
- 夜間や明け方に症状が強くなる
- 進行すると日中でも息苦しく、呼吸困難となる
これらの気管支喘息の症状は、夜間や早朝にかけて悪化する事が多く、問診でも重要な判断材料になります。
発作が軽い段階ではゼーゼーという喘鳴がするというだけですが、発作が激しくなると横になって寝ると呼吸困難を起こす(起坐呼吸)、身体の酸素飽和度(SPO2)が低下するなどの症状がみられるようになり、意識も朦朧としてきます。
気管支喘息の診断
持病に喘息がある場合とそうでない場合では、その後、他の病気にかかった際に、行える検査や使用できる薬剤など治療法が変わってきます。
現代では呼気NO検査のような機器の登場で喘息の判断が行いやすくなりましたが、以前は問診と聴診のみで診断をしていたため、気管支炎で痰が絡んでゼーゼーしているだけで喘息と診断されてしまうこともありました。
喘息の診断は難しく、慎重に検査をして判断する必要があります。
喘息の診断
当院では、以下の内容から総合的に喘息の診断をしております。
- 繰り返し呼吸困難や喘鳴を起こす
- 問診により過去にアレルギー性の症状がみられる、家族に喘息の患者さんがいる
- 気管支拡張薬を使うと喘鳴や呼吸困難が改善する
- ゼーゼーと喘鳴を起こす他の病気を除外する
喘息は、肺でがん細胞が見つかれば肺がんであるというように、簡単に特定できる病気ではありません。
中には、喘息の症状がみられる喘息患者さんの胸部をエックス線検査してみると、全く異常が見られないこともあります。このように、喘息は診断が難しいため、慎重に行うことが大切です。
当院での喘息の診断に関して
当院では、以下の方法で喘息の診断を行っています。
- 丁寧に問診、聴診を行う
- 呼気一酸化窒素(NO)検査、スパイロメトリー検査によって数値やグラフを確認する
- 気管支拡張薬を処方し、治療が改善するかどうか反応をみる
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エックス線検査や、必要があればCT検査、また血液検査を行い、ゼーゼーと喘鳴を起こす他の病気を除外する
※CT検査が必要な場合は連携する医療機関をご紹介します。
呼気NO検査は小学校低学年ですと難しい場合がありますが、オシロメトリー検査は筒を加えて安静呼吸を行うだけですので4歳から可能で、お子様の喘息の診断を補助する上で有効です。
呼気NO検査
呼気NO検査は息を吐いて行う検査です。座りながら短時間息を吐くだけの検査ですので、ストレス無くお気軽に行えることがメリットです。
この検査は2013年に保険適応となったことで、現在では多くの医療機関で行われております。この検査が一般化したことで、気道の好酸球性(アレルギー性)の炎症具合を数値化することが可能となりました。
呼気NO検査メリット
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- 喘息の診断に有用
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喘息の治療経過を評価できる
- 咳が続く人に対し、通常の風邪の後の咳か、咳喘息による咳かの判断が行える
呼気NO検査数値の解釈
成人25ppb未満、小児20ppb未満 |
アレルギー性の炎症の可能性は低い |
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成人25ppb以上、小児25ppb以上 |
アレルギー性の炎症の可能性がある |
成人50ppb以上、小児35ppb以上 |
アレルギー性の炎症がとても強い |
37ppb以上の場合はほぼ喘息であると推定できます。指標の見方は患者さんにご説明いたします。
この検査の特徴として、アレルギー性鼻炎をお持ちの方は数値が高く出る傾向にあり、一方で喫煙をしている・喘息の発作が出ているなどの時は数値が低く出る傾向があります。
スパイロメトリー検査
スパイロメトリー検査一般的に広く行われる呼吸機能検査方法です。
喘息の評価、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の評価に有効です。
気管支喘息の悪化の原因
- 風邪(感冒)、インフルエンザなどの感染症
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アレルギーの誘因物質(スギ、ヒノキ、ブタクサなどの花粉、ハウスダスト、タバコの煙など)
- 運動
- 気圧の変化、季節の変わり目
- ストレス(心理的な要因)
- ペット
風邪(感冒)はある程度予防ができますが、気圧の変化や季節の変わり目など天候に関するものは避けることは難しいです。そのため、発作が起きてもそれ以上悪化しないように、普段から自身の喘息のコントロール状況を把握し、発症した際には適切に治療を行う事が大切です。
ペットのアレルギーが原因の一つと判明しても、愛着のあるペットを手放すのは厳しいため、そのまま飼い続ける患者さんは多いです。その場合は、上手に治療を並行しながら、せめて新しくペットを迎えることは避けるよう、お願いをしております。
気管支喘息の治療
まずはご自分の喘息の状態を自己管理するために、ピークフローメーター(自宅でできる簡易的な呼吸機能測定器)を使って喘息日誌を付けていただくようお勧めします。
長期管理治療
(慢性期の治療)
気管支喘息の治療に最も効果的なものは、吸入ステロイド薬になります。
吸入ステロイド薬は約30年ほど前から使用されるようになり、この薬の登場によって喘息死する患者さんが激減しました。
ステロイドと聞くと副作用が心配の方も多いと思いますが、吸入ステロイド薬は内服と違って副作用は少なく、妊娠中の患者さんでも安心してお使いいただけます。
また、吸入ステロイド薬以外の治療法には以下のようなものがあります。
- 抗ロイコトリエン受容体拮抗薬(内服)
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長時間作用性β2刺激薬(吸入)
- 長時間作用性抗コリン薬(吸入)
- テオフィリン製剤(内服)
- 抗ヒスタミン薬(内服):必要時
現在は吸入ステロイド薬と長時間作用型β2刺激薬の合剤が頻用されています。その他の薬も組み合わせて使用しますが、あくまで治療の中心は吸入ステロイド薬であることを忘れないようにしましょう。
仮に上記の薬の使用を忘れてしまうことがあっても、吸入ステロイド薬だけはしっかり継続することが、気管支喘息を治療する上で最も大切です。
なお、吸入ステロイド薬の副作用のうち、代表的なものが声がれです。また、吸入後にうがいが不十分だと、口腔カンジダを引き起こしやすくなります。吸入後はしっかりうがいをしましょう。歯みがきの前や食事の前に吸入する事もお勧めしております。
吸入ステロイド薬のデバイスには、噴射する粒子の大きさによって、いくつか種類があります。ドライパウダー製剤という粒子の粗いものから、スプレータイプの粒子の細かいものまであります。
どのデバイスを選択するかは、患者さんのご希望や状態に合わせて決定します。
またお子様の患者さんの中には、デバイスをうまく使えないということもあります。
その場合はエアロチャンバー、もしくはネブライザー器具を用いると、より簡単に吸入が行えますので、状況に合わせてご提案させていただきます。
また、これらの薬でコントロールが不十分な場合は、生物学的製剤という注射薬を併用します。抗IgE抗体(オマリツマブ:ゾレア🄬)、抗IL-5抗体(メポリツマブ:ヌーカラ🄬)、抗IL-5受容体α抗体(ベンラリツマブ:ファセンラ🄬)、抗IL-4受容体α抗体(デュピルマブ:デュピクセント🄬)、抗TSLP抗体(ゼビュイティ🄬)などがあります。生物学的製剤は費用が高額になるため、医療費控除や高額療養費制度の利用など自己負担額を減らすためのご相談にのらせていただきます。
発作時の治療
発作時には、まずは気管支拡張薬(短時間作用型β2刺激薬)を吸入していただきます。症状が強く吸入しにくい場合はネブライザーが効果的です。メプチン、サルタノールインヘラーなどスプレータイプの製剤もあり、これらβ2刺激薬の吸入は自宅や外出先でもお気軽に行えます。
なお、β2刺激薬は、喘息そのものを根本的に治療するものではありません。吸入ステロイド薬を毎日使用したうえで緊急時に対応するものになりますので、自宅や外出先で発作が出た際にお使いください。使用後の症状の経過をご自身で確認し、効果が実感できれば今までよりも生活の質も向上しますので、必要時はためらわずに使用するようにしましょう。
薬の副作用としては動悸、手足の震えがあります。もしこのような副作用が現れる場合は、本来1回2プッシュで使用するところを、1回1プッシュに減らすなど、工夫しましょう。
発作が出ると苦しくて横になって寝られないという場合は、中程度の発作に分類されます。その場合は、吸入よりも効果の高い内服や点滴でのステロイドの治療が必要になります。喘息の発作は火事のようなもので、強い炎に少量の水をかけても一向に鎮火できません。そのため、治療は最初から躊躇せず、適切な量を使用し、まずはしっかりと火を消すことに注力しましょう。
また、治療に対して抵抗性を伴う発作を起こしたり、短期間で発作を繰り返す患者さんの中には、喫煙習慣のある方が一定数いらっしゃいます。喫煙は、吸入ステロイド薬の効果を減弱させ、慢性期の喘息治療そのものを阻害します。また喫煙はCOPDを誘発し、COPDと喘息を合併した状態を引き起こすと呼吸機能の低下が早まることも近年報告されています。そのため、喘息患者さんの中で喫煙習慣がある方は、自身の将来を考え、真剣に禁煙に取り組んでみる事をお勧めいたします。