咳喘息

咳喘息(せきぜんそく)とは

咳喘息は、一般的な喘息と異なり喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒューという音)を伴わず、長引く咳症状のみが特徴の喘息です。咳喘息の原因は、気管支がアレルギーで炎症などを起こすことで気道過敏性が増し、その結果、気道が伸び縮みするたびに咳が出やすくなると考えられています。そのため、まずは気管支拡張薬を使って咳が改善するかどうかを確認することが、診断の手がかりとなります。

咳喘息の症状

咳喘息による咳は、日中の会話時や寒暖差・湿度の差が激しい時にも出ますが、特に就寝前・深夜・早朝に悪化する傾向があります。そのため咳喘息では就寝中に咳が強まって目が覚めてしまい、睡眠不足に陥ることもあります。一般的に咳喘息は、季節の変わり目、寒暖差、運動、喫煙(副流煙も含む)、雨天、花粉、黄砂などにより誘発されます。これらは通常の喘息と同様、気管支がアレルギーで炎症などを起こすことで気道過敏性が増すことで起こると考えられており、繰り返し起こることも特徴です。通常の喘息と異なる点は、喘鳴が起きないことです。そのほかの症状としては、「喉に咽喉頭異常感という違和感を起こすこともあります。咽喉頭異常感の主な特徴は、喉のイガイガ感(痒い感じ)やしめつけ感などの異常感があったり、前胸部(喉~気管のあたり)が重たく感じるなどが挙げられます。

咳喘息の診断基準

咳喘息は季節性や日内差の影響を受けて咳が長引き、喘鳴がなく、気管支拡張薬の効果が見られれば、咳喘息と診断されます。しかし、この診断基準は咳の持続期間を除き比較的大雑把なため、一部通常の喘息の症状安定者や軽症喘息の患者さんも該当してしまいます。実際、咳喘息と診断された患者さんのうち3~4割程度が、後に通常の喘息であったというデータも報告されています。気道過敏性の亢進を疑う症状や好酸球高値、呼気NOFeNO)高値などは、全ての喘息において共通にみられる症状ですので、咳喘息の診断条件を満たした場合でも、呼吸機能検査を行なって通常の喘息の可能性を除外すること、後に通常の喘息に移行しないかなど、慎重に経過を観察することが重要です。

咳喘息の重症度と初期治療

咳喘息は重症度に応じて「軽症」「中等症以上」の2つに分類されます。長引く咳症状を訴える方のほとんどは、連日同じ症状を発症しておりますので「中等症以上」に該当します。当院では、中等症以上の患者さんに対しては初期治療として中高用量の吸入ステロイド(ICS)と長時間作用β2刺激薬(LABA)の配合剤(ICS/LABA)を処方します。これらの治療で症状が毎日起こらなくなってきたら、重症度が「中等症以上」から「軽症」に緩和されたと考えられますので、治療に使う薬も吸入ステロイド(ICS)へ減薬します。
薬を使用したことで声がれや喉の痛み、手の震えや動悸などの副作用が発症した際には、すぐにご相談ください。

咳喘息はいつまで
治療をするべきか?

一般的に成人の34割程度は、経過中に咳喘息から通常の喘息に移行すると言われていますが、吸入ステロイドを使用すると喘息への移行率が低下することが報告されています。また吸入ステロイドを使用すると症状自体は速やかに改善していきますが、治療を中止するとしばしば再度発症することがあります。咳嗽・喀痰のガイドライン2017では、治療は専門的施設にて、推奨されている客観的指標(呼吸機能や気道炎症マーカー)に基づき、長期的に治療することを推奨しています。また非専門施設においても、1年以上治療を行い、吸入ステロイドの使用を低用量まで減量できた上で無症状になれば、吸入ステロイドの使用を中止しても良いとされています。当院では、初診時までの経過(繰り返しの経過)や、呼吸機能(気道抵抗性試験や呼吸機能検査で気道が狭くなることが確認される)、気道炎症の度合い(呼気NOや血中好酸球値の数値が高い)、治療後の経過(治療中止後に短期間で症状再発を繰り返す)などにより、通常の喘息への移行リスクを考慮し、患者さんごとに推奨される治療期間を個別に提案しています。治療を中止する際は、通常の喘息へ移行した際に出る可能性の症状(喘鳴や呼吸苦)を患者さんにお伝えし、もしこのような症状が現れた際には、速やかに受診するよう注意喚起しています。

咳喘息を根本的に解決する
方法(体質改善)はあるか

咳喘息は、気管支のアレルギーによる気道過敏性の亢進が原因であると考えられているため、治療を中止したことにより症状が再発する場合には、根本的な原因であるアレルゲン(ほこり、ダニ、カビ、ペットの毛など)を特定することが大切です。まず、アレルゲンを吸引しないように環境を変えることが、症状悪化を予防する上で重要になります。気管支喘息においては、ダニアレルギー陽性の方に対し舌下免疫療法を行うと、気道過敏性や鼻アレルギー症状が改善し、治療薬を減量できたり、症状そのものが改善できることが報告されています。また、症状が繰り返し起き、吸入薬が中止出来ない咳喘息の場合でも、ダニアレルギー陽性のアレルギー性鼻炎を併発している方には、舌下免疫療法によるアレルギー体質改善を検討しましょう。